ハンドメイド、作品と見るか、図画工作と見るか Ⅱ

毎日毎日本当に暑いですね。
こんな日は冷房の効いた部屋でビールをきゅーーっと飲みながら、うだうだとするに限ります。

それでは、前回までのあらすじ。
オンリーワンを求めたファッショニスタたちが目をつけたハンドメイド市場。
徐々にではありますがマーケットとして成熟しつつあります。そこで一定のクォリティを満たせば有名作家への道が開き、「荒稼ぎするぜ!」というお話でした(一部誇張あり)。

しかしです、そもそもハンドメイド作品ってそんなに簡単に売ったり買ったりしていいの?
いくらminneで売っていいといっても、何だか見たことあるような、インスピレーションを受けすぎたような(パクリ)ハンドメイドって、作品と言い切っちゃっていいものなんでしょうか?
そこで今回は、ハンドメイドに関する「著作権」について書いてみることにします。

1.そもそも「著作権」って何?

簡単に言うと、著作権とは自分の作品を自分のものとして守る権利のことです。
まあこう言えば身も蓋もないんですけど、もう少し専門っぽく解説してみますね。

日本における著作権は、「著作権法」という法律によって定義されています。そこにはこう書かれています(長いので簡略化しています)。
【自分の考えや気持ちを作品として表現したものを「著作物」、著作物を創作した人を「著作者」、著作者に対して法律によって与えられる権利のことを「著作権」と言います。著作権制度は、著作者の努力に報いることで、文化が発展することを目的としています】 
(公益財団法人 著作権情報センターより抜粋)

「作品として表現したもの=著作物」なんですが、ではどういったものが著作物にあたるのかというと、必要な4要件というものがあります。それぞれ簡単に解説します。
1. 作品に創作者(著作者)の思想または感情が表れていること
「思想または感情」というのはそれほど大仰なものではなく、作者の考えや思いといった程度のものですね。

2. その作品に創作者(著作者)の個性が表れていること
他人の真似はダメ!!ゼッタイ!! とういこと。オリジナリティで勝負しましょ!

3. 表現されたもの(作品)であること
作品とは何らかの形として他人に伝えられるものでなくてはダメということ。「先に思いついてたのに」なんて、思ってただけじゃあ何にもなりません。

4. 文芸・学術・美術または音楽の範囲に属するものであること
これは何らかの芸術分野の作品であることが必要だということです。工業製品は著作物とはみなされません。音楽なのか美術なのか判然としないもの(ミュージカルなど)も著作物たりえます。

こういった著作物を創作した人物を「著作者」といい、著作者が著作物に対して既得的に持っている権利を「著作権」というわけです。その権利は自然発生し、権利を得るための特別な手続きは必要ありません。
「著作権」は単純に言うと「著作を守る権利」です。自分の著作を他人が勝手に使用したり改変したり、あるいは勝手に販売(!!)したりしないように守る権利ですね。
法律ですので、もっと様々な状況における解釈や条文が掘り下げて細分化されているのですが、まあこの辺でやめておきます。
これ以上知りたい方は上記の「公益財団法人 著作権情報センター」のHP(https://www.cric.or.jp/)がわかりやすくお勧めです。
そして、具体的にどうこうって場合は、栃木県産業振興センターにある知財総合支援窓口にお越しください。

2.ハンドメイド品販売の注意点

話をハンドメイド作品に戻します。
作品には著作権があって勝手に侵害できないらしいことはわかりました。ここでいう「侵害」とは、著作者への断りなしでの販売もしくはそれに類する行為です。
自分で楽しむだけなら何の問題もありません。
では、ハンドメイド作品を販売するにはどういった点に注意すればいいのでしょうか。

まずは「そりゃダメだよね」篇。

●キャラクターを模倣ーー有名なキャラクターのぬいぐるみを作っちゃいました!
●キャラクターの入った素材を使用ーー子供の大好きなキャラでバッグを作っちゃいました!
●ブランドとして認知されているロゴを使用または模倣ーー1文字変えればいいんじゃね?

この辺は完全アウトですね…。
巷で人気のある、浦安方面のねずみさんとか、ぴかぴか言ってる黄色い獣とかは真似したくなるものですが、まあダメです。彼らは著作権やその他の権利(商標権など)でガチガチに守られてますから、安易に製作して販売などしようものなら訴えられかねません。
注意が必要なのはそれらのキャラクターが印刷された布地などを使用してもNGなことです。生地自体は販売されてますけどね。
それらを使った作品を販売することは「商用での使用」とみなされ、権利を侵害する恐れがあります。
もちろん有名ブランドのニセモノちっくに作ろうとしたってダメです。adadasとかpyumaとか。豹の向きが反対だったり。今じゃ考えられませんが、昭和の時代にはお土産屋さんとかにそんなTシャツが売ってた気がします。

次が「えーこれダメなの?」篇。

●本に掲載されている作品を模倣ーー布地はオリジナルだし
●キットで作った作品ーー型紙なんか作れないし
●無料配布・公開されているレシピを真似したものーーだって無料じゃん

ハンドメイド関連の本には作例が公開されているものがありますが、それらを基に作った作品を販売することは違法となる可能性があります。一応、その本には作品に対する著作権の意向が明記してあるのが普通ですので確認しましょう。
「商用使用は禁止」とあれば絶対NGです。
手芸店で販売されているキットは大概が「商用使用は禁止」です。記載がなくてもダメな場合が多いので、これも販売元に確認しましょう。基本やらない方がベターです。
また、公開されているレシピだからといって、そのまま作って売っていいのかというとこれもダメです。日本でテレビ番組を観るのは基本的に無料ですが、その番組をインターネットに無断でアップしたら違法になるのと同じです。無料のものにも著作権は存在します。日本民間放送連盟のCMで「つかまるよ、マジで。」ってトメ吉も言ってます。https://www.j-ba.or.jp/ihoubokumetsu/

最後がモラル篇

●他の作家の作品を模倣ーーばれなきゃいいんじゃない?

既に発表された他の作家の作品を真似して製作した場合は本作の著作権を侵害したことになります。ちょっと形を変えたり色を変えたりした程度で、他人が見て「真似だな」と思われたら基本アウトです。

3.オリジナリティ

さて、ここまではハンドメイドを販売するにあたって、他者の著作権を侵害しそうな場面をざざっとピックアップしてみましたが、そもそもみんなが作っているハンドメイド(っぽい)作品って、そんなにオリジナリティあふれるものなんでしょうか?

実はハンドメイド作品は芸術・美術品である場合が極端に少なく、基本的には量産を前提としてデザインされている「実用品」です。なので、ハンドメイドで製作しただけでは著作権が発生することはほとんどありません。
しかしそれに付随する型紙や作り方のレシピ、あるいはオリジナリティのあるデザインなどには著作権が発生します。ハンドメイドにおいて侵害しやすいのはそれらの方なんですね。

特に技術的な面において、型紙の製作や全体のデザインをできるクラフトワーカーはごく少なく、たいていは雑誌などの型紙から起こしたものを手縫いなどすることによって「手作り」と称して作品としています。これらはいわば「家庭内手工業品」であり、はっきり言っちゃうと模倣品です。

でもでもでも、そもそものハンドメイドの理念としてはそれでオッケーだったんですよ。家庭でお母さんが手作りする、といった用途がおおもとで、雑誌なんかに公開された型紙を個人で使う分には使用も許されているものが普通でした。

しかしいまやインターネットの時代。商魂みなぎる方もいれば、承認欲求に従ったまま、いま作ったばかりのたどたどしいハンドメイド作品をSNSにアップする方もおられます。

結論を言うと、ハンドメイド作品を売るにはオリジナリティがなければ売れない、ということになります。何かの模倣は間違いなく違法です。
minneなどを覗くと、浦安方面のねずみさんやりんご何個か分の白猫さんがたまに売られてますが、違法ですのでアカウントの停止やひどい場合は訴訟に発展する可能性がありますよ。誰かがやっていればOK、ということにはなりませんのでご注意を。
販売前には、インターネットでご自身の作品(商品)に類似しているものがないか、できる限り丁寧に調べることをお勧めします。


ハンドメイドとは無関係ですが、「著作権」というと思い出すエピソードが一つあります。最後にそれをご紹介しましょう。

2011年、アップルはタブレット端末のデザインを巡ってサムスンを特許侵害で訴えました。アップル社の製品iPadのデザインを、サムスン電子社のギャラクシータブが模倣しているとして訴訟を起こしたのです。
これらの訴訟はアメリカ国内にとどまらず、最大10か国以上の裁判所で争われました。
その中でイギリスの裁判所での判決がイカしてます。2012年7月9日の判決で、以下のように述べています。

「ギャラクシーはアップルのような控えめで非常にシンプルなデザインを有しておらず、アップルほどクールではない。iPadと誤認されることはない」

アップルの訴えは退けられ、サムスン側が勝訴しました。
勝ったサムスンも何だかなーという内容。勝ったとはいえ、自社製品がクールではないって・・・。
さすが、ロックの国イギリス!サイコーにCOOLなのはイギリスだね!

今回のブログを書くにあたり、産業振興センター知財総合支援窓口の樋田さんにご教授いただきました。
それではみなさま、ごきげんようさようなら。

栃木県よろず支援拠点 スタッフ 鳥井