損益計算書(PL)の基本的な見方とその活用方法

1.PLの構造は「上から」、「下から見る」

 当拠点に来られた方々に会計書類の活用状況をお聞きすることがありますが、経理のIT化を図り適時業績チェックを行っている会社、月次決算はあるものの内容をあまり見ていない会社、年度決算のみの会社など、その活用方法は様々です。今回は、損益計算書(以下PL)をベースにその活用方法について考えてみます。

 図1に一般的なPL(経常利益まで)を示しました。PLは、上から見る場合と下から見る場合ではニュアンスが異なってきます。上から見ると結果が示されていますが、下から見ることで管理的な側面が見えてきます。 

まず、図1を上から見た場合、1,000の売上があり、売上原価として400を要し、売上総利益(粗利)として600のお金を会社にもたらしていることがわかります。さらに、その粗利から経費(=マイナスのお金)として、販管費540、営業外損益10を使い、結果として経常利益50を計上しています。ここで、図1において売上総利益の下で線を長くしましたが、この線の上下ではお金の性格が異なります。

図1 PLの構造

ざっくり言うと、線の上側は粗利として会社に入ってくるお金(プラス)であり、下側は経費として会社から出ていくお金(マイナス)です。したがって、経常利益を獲得するためには、下側の経費である販管費及び営業外損益の合計の金額以上を、上側の売上総利益(粗利)として稼ぐ必要があるということです。

 次に、図1を下から見た場合、冗長な経営でないことを前提に、50の経常利益を獲得するためには、10の営業外損益及び540の販管費が必要であることがわかります。さらに、そこから目的の経常利益50を実現するためには、600の売上総利益(粗利)が必要であり、結果として1,000の売上高が必要であることがわかります。つまり、経費である旅費交通費などの販管費及び営業外損益の各経費数値を適切に予測し、目標経常利益を実現するのに必要となる粗利及び売上高などを事前に計画として定め、実行において計画時の数値をキープすれば、目標の経常利益を獲得できることを示しています。

しかしながら、実際の経営現場では計画どおりには進まないことのほうが多く、目標の経常利益獲得のためには、経費の投入や売上から発生する粗利の積み上げなどを日々管理し、必要に応じて計画を見直すなど、経営をコントロールしていくことが重要です。

2.粗利を意識した日々の管理

 前項で、目標の経常利益を獲得するためには、経費である販管費および営業外損益の合計金額以上を、粗利(売上総利益)で稼ぐ必要がある、と述べました。これをイメージとして図2に示しました。日々の個々の売上から獲得した粗利①、②、③・・・を、額の大小はあるものの地道に積み上げていった様子です。粗利(m)まで積み上がった時点が、販管費などの必要経費をカバーしたトントン(経常利益ゼロ)の状態であり、そこからさらに粗利を積み増し、粗利(z)で目標の経常利益を獲得した状態を示しています。

図2 粗利の積み上げ

 ここで重要なことは、積み上げるのは「売上」ではなく「粗利」であるという点です。販管費及び営業外損益の合計金額以上になるよう「粗利」を日々積み上げていくことが必要になります。

3.値引き販売による粗利への影響

 よく、売上欲しさから値引き販売をしてしまうケースがあります。値引き販売をすること自体は構いませんが、値引きにより売価が下がる一方、仕入れなどの原価は変化しないため、粗利が減少する点に注意が必要です。値引き販売は粗利に対する影響が大きいのです。仮に値引きにより粗利が1/2になった場合、減少した粗利額相当分を取り返すには2倍の数量の販売、または他商品の粗利獲得などでカバーしなくてはなりません。さらに、粗利の減少分を販売数量の増加で補おうとする場合、事業内容によっては、自社の生産能力などに制限があることも考慮しておく必要があります。例えば、飲食店の席数、サービスを提供する要員数、製造業における設備能力などで供給できる量に制限がかかってしまう事業では、特に注意が必要です。

4.目標利益達成に向けての管理、粗利を確保しよう

 目標管理の基本的な考え方は、定期的にPLで現在の損益状況をチェックし、目標値に対し実績値が不足しているようなら目標利益を達成すべく早急に対策することです。例えば、毎月の試算表PLを確認し、先月の実績値、累計値、年間見通しなどをチェックし、目標利益との差異があれば原因を調査し、今月以降の計画を見直して対策を講じる必要があります。必要な対策は、単に「がんばろう」との掛け声だけでなく、数値計画を含んだ対策です。具体的には、事前に計画した年間利益計画からの差異を取り返すべく、今後の毎月の目標利益を再設定し、これを実現するための経費である販管費及び営業外損益を予測し、必要となる粗利及び売上高を求め、確実に粗利を確保していく対応です。

おわりに、これまでに述べたようなPLを活用した管理は、すでに社長・各部門の管理者は日々実践していることと思います。このような管理活動を円滑に進めるためには、随時会社の業績数値を見ることができる体制が望ましいといえます。

栃木県北地域を担当しています。

また、最近はクラウド会計、パソコン会計に関係するニュースなどを目にすることが増えましたが、これらの活用も有効な一つの選択肢として考慮に入れておくとよいでしょう。PLを単に結果と捉えるだけでなく、日々の経営活動に活かしていただきたいと感じています。

栃木県よろず支援拠点 コーディネーター 高橋 正英