1.リスキリングとは?
皆様こんにちは。コーディネーターの村田です。
最近、「リスキリング」という言葉をよく耳にします。いろいろな書籍もでていますが、そもそも「リスキリング」とは何なのでしょうか。 経済産業省の審議会で発表された資料(2021年2月:リクルートワークス研究所人事研究センター)によると、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。
似たような言葉に「リカレント教育」がありますが、どちらも「学び直し」ということでは同様ですが、全く異なるものとされています。「リカレント教育」は、分野や領域を限定せず、学び直すこと自体を目的としているのに対して、「リスキリング」は、新しい職業に就くために必要なスキルを習得することを目的としています。
(参考)リスキリングとリカレント教育の違い
リスキリング | リカレント教育 | |
期間 | 短期 | 長期(反復) |
背景 | 事業環境の変化に伴う雇用消失 | 生涯学習 |
目的 | 学習 スキル習得 | 学習 |
実施責任 | 企業 | 個人 |
学習分野 | 主にデジタル分野 | 広範囲 |
資格 | スキル取得の証明 | 学位等学習の証明 |
(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ作成資料を参考に作成)
別な観点で「リスキリング」に似た言葉に「アップスキリング」、「アウトスキリング」というものがあります。「アップスキリング」は、一般的に「スキルアップ」と言われています。これは、特定の分野や領域でのスキルを習得して、できることを増やしていくことを指します。「アウトスキリング」は、企業がリストラ対象の従業員に対してリスキリングの機会を提供する支援策のことです。
ここまで、言葉の定義について説明してきましたが、「リスキリング」を簡単に言うと「将来必要となる新しいスキルを獲得するプロセス」だと考えます。事業環境が大きく変わっていく中で、企業も変革を迫られており、そのために必要な人材確保が必要です。また、企業が変革する中で、新たなスキルが個人に求められることになります。したがって、「リスキリング」は制度や仕組みを作ることではなく、企業が生き残っていくために必要かつ重要な戦略と言えます。
2.なぜ今リスキリング?
日本全体の大きな課題の一つに、必ずやってくる更なる高齢化社会と人口減少への対応があります。現在も多くの中小企業で人手不足が問題になっていますが、それがより深刻になっていくことは明らかです。
日本の人口の推移(出所:総務省)
特に生産年齢人口(15歳以上65歳以下)が、2030年には現在よりも600万人減少すると推測されています。その対応として、デジタルを活用した事業改革、いわゆるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の動きが活発になってきています。DXは大企業だけでなく、今では中小企業もその取組みが求められています。政府も「中小企業省力化投資補助金」や「IT導入補助金」など、中小企業がDXを推進するための支援施策を積極的に打ち出しています。
では、中小企業がDXに取り組む場合、どんな人材が必要なるのでしょうか。例えば、製造業では、機械の加工や組み立て、製品の検品など、IoTを活用して自動化することが考えられます。その場合、製造技術だけでなくIoTを運用するスキルが求められます。自動化が進むことで、IoTのスキルを持たない、加工や検品に関わっていた社員が職を失うことになります。その一方で、企業は、社員が培った当社独自の製品や製造工程の知識や経験によって養われたスキルを失うことになります。このような状況は、企業にとってもそこで働く従業員にとっても、決して望ましいことではありません。
では、熟練の社員がリスキリングによってIoTのスキルを習得したらどうでしょう。企業が新たな挑戦をするときに、自社の製品に精通した社員が、先頭に立ってIoTを推進する強力な戦力となるのではないでしょうか。社員にとっても、慣れ親しんだ環境の中で安定的に働くことができます。そして、リスキリングの環境が整備されることで、社員の定着率も向上し、取組自体がその企業の魅力になっていけば、採用もしやすくなる可能性があります。 したがって、人材不足のリスクへの対応と将来の企業の価値を高めるためにも、リスキリングの取組を今から始めては如何でしょう。
3.リスキリングって、何をすればいいのか?
リスキリングに取り組みたいが何をすればよいのか、その方法について説明します。特に決まった方法があるわけではありませんが、必ずやらなければならないことを順番に説明します。
企業として設定した目標達成するために必要なスキルを習得するので、あくまでも仕事として取り扱うべきであり、社内にも周知徹底することが重要です。したがって、トレーニングや講義を受けている時間も勤務時間内で行うなど、環境と制度の整備が不可欠です。
また、最も重要なことが習得したスキルを実践できる環境をつくることです。習ったことが仕事に活かせるようにするためには、実際に仕事として行うことで自分のものにしていくばかりでなく、周囲へリスキリングの成果を認めてもらうことができます。 企業にとって大きな負担はありますが、これらが、リスキリングを個人ではなく企業が責任を持って取り組む理由です。
4.リスキリングで実現できること
リスキリングによって実現できることは、大きくは次の3つです。
①企業にとって、人材の確保がしやすくなることです。人材確保には、採用と育成の二つの方法があります。リスキリングによって、育成の仕組みができると、安定した雇用環境が出来、定着率が向上します。特に、中高年層にとって新たな活躍の場が提供されることになり、安心して働けるということになります。その育成の仕組み自体が企業の魅力となり、採用にも好影響をもたらす可能性あります。
②社員にとって、自分のキャリアプランを立てる上で、可能性を拡げることができます。そ れぞれの企業や業界独自のスキルだけでは、自分の可能性を考えることが難しいかもしれませんが、新しいスキルを習得し、実践できれば、実績に裏付けされた自信につながります。もしも、会社の次の目標が、習得したスキルと合わない場合も、外部に活躍の場を見つけることができます。
③最近の事業環境は、DXの取組によって大きく変化しています。特に最近のデジタル技術の進化は目を見張るばかりです。こうした事業環境の変化に対応するためには、デジタルリテラシーの高い人材が必要です。現在、デジタル分野はリスキリングとして取り組みやすい状況です。前述の政府の支援施策が多くあることに加え、多くの民間の教育機関がデジタル技術を活用した教育サービスを提供しています。これらを活用することで、企業の経済的な負担も少なくすることも可能です。
最後に、栃木県よろず支援拠点には、中小企業の経営に精通した中小企業診断士、労務の専門家である社会保険労務士、DXの取組に詳しいITの専門家など、多彩なコーディネーターがリスキリングのご相談に対応します。
栃木県よろず支援拠点では、ちょっとした不安ごとから深刻なお悩みまで、経営に関するご相談を経験豊かな専門家が無料でお応えいたします。
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