水の硬度が味の決め手~臼居コーディネーター~

 4月からコーディネーターに就任しました臼居芳美と申します。よろしくお願いいたします。

 日本では一般的に硬度が100以上の水を硬水、100未満の水を軟水と呼んでいる。カルシウムとマグネシウムの含有量で硬度が示される。味覚でいうと、まろやかで口あたりがよいのが軟水であり、苦味がありのどごしが硬く感じるものが硬水である。日本の国土は高地から低地への水の流れが速く、短時間で海に流れ込むために地層中のミネラルを吸収する時間が短いうえ、火山地帯が多いためにミネラル分の少ない軟水となる。

 一方ヨーロッパや北米などの大陸では、平坦な大地が広がるため地中滞在時間が長く石灰岩の地層が多いので、ミネラルを多く含んだ硬水となる。では、私たちが飲んだり料理に使う時、どんな影響があるのかを考えてみる。

 かつおや昆布の和風だしは、硬度0~50くらいの軟水が適している。硬水ではミネラルの作用で出汁に含まれるアミノ酸がアクとして出てしまうため、うまみが十分に引き出せない。ちなみに栃木県の水道水は平均50前後。この数字は水道水でも和風だしがうまく取れることを示している。反対に肉を煮込む場合は、硬度200以上の硬水が適している。ブイヨンや豚骨スープを取る時は硬水が向いているということだ。
 このように硬度を使い分けることにより、素材の持つうま味を最大限に引き出すことができる。出汁を取る時ばかりでなく、米を炊くときも影響があらわれる。軟水で炊くとふっくらとしたご飯、硬水ではパラパラの仕上がりになる。そして緑茶こそ軟水で淹れた方が数倍の甘みが出る。コーヒーには硬水、ウイスキーや焼酎の水割りには軟水が向いている。

 私が水の硬度の影響を目の当たりにしたのは、今から12年前にスロバキア共和国で料理をした時である。あるご縁がありスロバキアの料理学校で和食の講座を受け持った。

 近年の和食ブームは中欧にも及んでいた。日本人から和食が習えるとあって、予想以上に多くのシェフやレストランのオーナーが受講してくれた。その料理学校で初めてだしをとった時のことである。スロバキアの北部には中央ヨーロッパから東ヨーロッパへと連なるカルパチア山脈が横たわり、山脈を水源とする水は喉越しも良くおいしい。水道水を直接飲むこともできる。私は迷わず蛇口から鍋に水を汲み、用意していった昆布と削りがつおでだしを取り始めた。そして出来上がっただしの味見をした時、首をかしげた。あら?かつおが効いていない・・・あんなに沢山使ったのにと。それでも作ったみそ汁は受講生には好評だった。しかし私自身は味の決まっていないみそ汁が腑に落ちなかった。

 帰国後のある日、フランス産の超硬水のミネラルウォーターを飲んだ時に、もしや水のせいだったかとひらめいた。調べたところ、硬水で魚介のだしは取りにくいとの文献が見つかった。それからというもの海外で料理をする時はまず水の調達から始まる。街のスーパーでも容易に入手できるクリスタルガイザー(硬度38 アメリカ産)もしくはボルヴィック(硬度60 フランス産)を求める。
 素材の風味を最大限に引き出すには使用する水が影響することを念頭に置いて料理すると、今まで以上に美味しい結果が生まれるかもしれません。

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