「自己変革力」をつけよう!(惠美須コーディネーター)

1 自己変革力

栃木県よろず支援拠点コーディネーター、中小企業診断士の惠美須丈史(エビスタケシ)です。中小企業庁が「経営力再構築伴走支援ガイドライン」を発表しました。これは経営支援者のガイドラインですが今後、経営者はどうならなければならないかが書いてあり、経営者にとっても重要な資料だと私は考えます。端的に言いますと、経営者そして企業は自己変革と自走化(自己推進)ができるようにならなければなりません。ガイドラインでは、経営には「5つの壁」があると書かれています。

①「見えない壁」

経営状況を示す様々な情報の可視化ができていないため、本質的な課題を見極めるための前提条件が整っていない状態を指します。経営方針や事業戦略や財務情報が「見える化」されていないケースも多いです。

②「向き合わない壁」

経営者が現実を直視できず、優先課題の適切な設定と課題解決に向けた施策の落とし込みができない状態を指します。過去の成功体験に縛られて思い込みが働き課題に気づかない、問題を問題として捉えず課題を見過ごしている、問題を認識する余裕がないなど色々なケースがあるでしょう。

③「実行できない壁」

組織内外のしがらみや経営者の心理的な壁などがあり、課題解決策の実行ができない状態を指します。本質的な課題に向き合って課題解決策を考えられたとしても、実際に行動に移せない場合があります。特に、課題の所在が組織内外のしがらみや、経営者のトラウマ等の心理的な問題に深く関係するものであった場合、「問題なのは分かっているが、実行できない」ということになりがちです。

④ 「付いてこない壁」

現場の巻き込みが不十分で、現場レベルを踏まえた取組となっておらず、誰も当事者意識を持って課題解決に臨まない状態を指します。取組の実行性や持続性を考える上では、現場レベルで主体的かつ能動的に取組を考え、行動することも求められます。現場レベルでの意識の変革が必要です。「付いてこない壁」に苦しむ経営者も多いように感じます。

⑤「足りない壁」

課題が明確となり、リソースの確保と意欲の醸成はできたものの、課題解決のための知見や経験が足りない状態を指します。特に専門性の高い課題においては、外部の専門的・技術的知見を導入して取り組んでいくことが必要となることも考えられますが、ここまで来れば後一息と言ったところですが、中小企業・小規模事業者でここまで到達できているところは稀かもしれません。

これらの5つ壁を越えるには「自己変革力」が必要なのです。

2 まずは「見える化」を!「企業の健康診断」をやってみる!

まずは「見えない壁」を乗り越えなくてはいけません。中小企業庁が良いツールを出しています。ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)と言うツールです。事業者の経営の現状を把握し、見える化できるようになっています。財務情報に基づく分析(6つの指標)と非財務情報(業務フロー・商流、4つの視点<経営者、事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制>)で構成されています。ロカベンはよろず支援拠点などの公的支援機関、あるいは中小企業診断士などの士業専門家等と対話しながら作成することが効果的です。自分でマニュアルを読みながら作成するのも良いでしょう。ChatGPT等の人工知能を活用して作成するのもアリだと思います。作成によって経営者自身が「気づき」を得られ、課題を設定し、課題解決を通じた事業拡大や経営改善を目指せる一歩になります。

3 強み・適性を活かした自己変革そして企業変革を!

国のガイドラインでは触れられていないことを最後に書きたいと思います。壁の乗り越え方は人それぞれです。以前も書きましたが、人にはそれぞれ強み、適性があります。自分の強みや適性に合った壁の乗り越え方をしないと、非常に辛いことになるでしょう。発想することが得意な人、注目させることが得意な人、人を鼓舞することが得意な人、合意を得ることが得意な人、実行することが得意な人、管理することが得意な人、何かを改良することが得意な人、人が得意なことや不得意なことはまるで違います。あなたは何が得意で、何が不得意ですか?それを認識できていますか?全てを自分でやろうとすることが最大のボトルネックになっているかもしれません。経営においては得意なことは自分でやり、不得意なことは他者に委ねることが必要です。変革に本当に必要なことはそれかもしれません。

「5つの壁について考えていきたい」「まずは見える化したい「自分の強み・適性について考えてみたい」などどんな相談でも良いので気軽にご相談ください。経営支援者であり経営者でもある私もどんどん自己変革していきたいと思います。