栃木県よろず支援拠点 コーディネーターに聞く 第4回 山下 典江 コーディネーター

 栃木県よろず支援拠点コーディネーターの山下典江と申します。私は、令和2年4月に栃木県よろず支援拠点のコーディネーターとなりました。社会人デビューは銀行のシステム部門、それから結婚・出産を経てSEとして独立、19年前に宇都宮市に居を構えてのち、市内のIT系会社に勤務、その後地域・社会貢献活動団体に属し県内のNPO等の支援を行うなど幅広く活動をしてきました。

 中小企業診断士として、営利・非営利にかかわらず創業から集客、人材育成、資金繰りなど様々なご相談に応じてきました。現在栃木県よろず支援拠点では、創業予定者や小規模事業者の様々な経営相談をお受けしています。中でも福祉関係や非営利活動団体などのご相談については相談をお受けすることが多くあります。

 私が日ごろ心がけていることは、一人ひとりに寄り添い、じっくりお話を伺い、心の内を知り、真の課題を聴き取ることです。そして、相談者が自ら気づき、自ら選び、自ら決めて前に進んでいけるよう、援助することを心掛けています。

 昨今、世の中は複雑化し、ニーズは多様化し、コロナ禍に翻弄され、先行き不透明で不安要素に満ち溢れている厳しい社会環境ですが、そのような中でしっかりと将来の姿、すなわちビジョンを描き、地道かつ着実に夢に向かって前進しているPeach Base加藤美穂さんの支援事例をご紹介したいと思います。

支援事例

 Peach Baseは、「女の子専門」の学習塾です。高根沢町宝積寺にて小学生のお嬢様を対象に学習塾を経営しています。経営理念は「お預かりするお嬢様ひとりひとりが将来どんな土地に行っても咲き誇れるよう時代にあった基礎学力を育てます」。自ら課題を発見し自分なりの考えを打ち出すことのできる、そんな自立した女の子を輩出することを目指しています。

 加藤さんと私の出会いは約2年半前、初めてよろず支援拠点にお越しいただいた時から、加藤さんの思いは明確でした。女の子だけの塾を立ち上げる、その思いを形にすべく、一緒に漠然とした夢を事業計画に落とし込みながら、夢を実現可能な形に作り上げていきました。そして初めての相談から約3か月後に開業届を提出し、いよいよ開校に向けて本格的な集客活動に入ります。

まずは子どもたちが親しみやすいようなコーポレートキャラクターを知り合いのデザイナーに制作してもらい、チラシやホームページは自身で制作しました。チラシやホームページ制作についてはよろず支援拠点に幾度となく足を運び、専門家のアドバイスを受けながら、納得がいくまで自身で作り上げていきました。

   持続化補助金で設置した看板

認知拡大を図るためには近所に塾の存在を知ってもらいたい、そのためには看板が必要ということになり、小規模事業者持続化補助金にチャレンジ、2回目で採択され、女の子専門の塾をアピールできるかわいらしい看板を設置しました。看板を見た近所のおばあちゃんがお孫さんに紹介、入塾に至ったという例もありました。

創業から2年を経過した現在、塾生は満員とのこと、加藤さんに成功要因を聞いてみました。

成功要因は、①ブランディングの一貫性、②生徒に合わせたカスタマイズ、③猫に会いに来ることで癒しの場を提供、の3点とのことでした。①については開業当初からターゲットを女の子に限定したことで、チラシやHP、看板の他、教室内のデザインも徹底して女の子受けするものを起用できたこと、②については1人で経営していることで、迅速に意思決定でき、生徒にとってベストな提案ができること、③については、まさに「招き猫」といったところでしょうか。また、親御さんへのアフターフォローとして、LINEにて授業中の様子を配信したり、家庭での学習方法を伝えたりといったことを一人ひとりに丁寧に配信しており、親御さんからも好評を得ているとのことでした。

    DIYで製作した白板と教室
  人気の猫が子どもたちをお出迎え

 今後の展望については「英語学童かバイリンガル保育園のような施設を開設したい」と語る加藤さん。「現在の公立学童は、働く女性の増加に追いついていない。」といいます。夢は大きく、しかしながら目の前のことを丁寧にこなし、信頼と自信を高めていく姿に、今後ますます輝くであろう加藤さんの姿が思い浮かびます。

 このように栃木県よろず支援拠点では専門家28名体制でワンストップサービスを提供し、ビジネスマッチングや廃業・創業・事業承継・IT関連・デザイン・法律相談など幅広いご相談に応じています。中小企業やNPOの皆様、困った時、ヒントが欲しい時、背中を後押ししてほしい時には、是非何度でも無料で利用できる栃木県よろず支援拠点へご連絡ください。あなたのお話を親身に聴かせていただきます。


※本稿は、公益財団法人栃木県産業振興センターが発行する情報誌「産業情報とちぎ」11月号に掲載された内容です。