2025年 新年あけましておめでとうございます!
今年は巳(み)年ですね。ヘビは日本だけでなく、世界中で神の使いや繁栄の象徴として「幸運をもたらす」存在です。そのような恩恵をいっぱい受けて、みなさんのビジネスも大きく広がっていくといいですね!
今年も栃木県内の中小企業のために、コーディネーター全員一生懸命頑張っていきますので、引き続き栃木県よろず支援拠点をよろしくお願いいたします。 さて、新年1回目のブログはコーディネーターの高橋 英基(専門分野:IT/マーケティング)が担当させていただきます。
1.自動販売機の可能性は広がったけれど…
コロナ禍では、特にあらゆる食品関連企業(飲食店や食品製造・卸・小売業、農産物生産業・養殖業など)が窮地に立たされました。人との接触が大幅に制限されたために、特に外食や会食の需要が激減、これらの事業者は一気に「通常の方法とは別の形で売上を確保する事」を緊急に求められる事になりました。
そのような中で注目を浴びたのが、「キッチンカー」と「自動販売機」でした。私もいろんなところで自動販売機を見ましたが、最近では「こんなものまで入れているのか?」といった驚きがありました。
自動販売機といえば以前は飲料とアイスなどが商品の中心でしたが、コロナ禍では「非接触型の販売方法が可能になる」「24時間いつでも販売ができる」「人件費がかからない」といった様々な理由がプラスに働き、一気にいろんなところで使われるようになりました。私も栃木県内をはじめ、各地でいろんな自動販売機を見かけました。
各地で見かけた「焼肉(牛肉)」 「ドレッシング」 「海鮮(東北の海の幸)」の自販機
2.人気商品や知名度が高い商品といった、売れるものを用意すればいいの?
そんな自動販売機のビジネスですが、いまや様々な商品を取り扱った自動販売機をあちらこちらで普通に見かけるようになった一方で、その売れ方に関してはいわゆる「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれ始めているような気がします。
確かに自動販売機は機器を購入し、販売できる商品を用意すれば手軽に始めることができますが、「これなら売れるだろう!」と思った商品さえ用意すれば買ってもらえるほど、簡単なものではないような気がします。「勝ち組」「負け組」が綺麗に分かれるのは、そのような状況を証明しているのではないかと思います。
丁度コロナ禍で自動販売機ビジネスが注目された際に、現在でも主力となる冷凍系自動販売機を開発している会社の営業の方がおっしゃっていた、「売れる自動販売機となるためのポイント」としておっしゃった言葉が思い出されます。
実は、売り出す時点で「その商品が人気なのかどうか」はあまり関係がないそうです。確かに「全国的に知名度がある人気商品」を入れて販売する、という方法もありかと思いますし、最初は話題性が出るでしょう。しかし、「ロイヤルカスタマー(ブランド忠誠心の高いお客様)」のような本当に強固なファンを作らないと、結局「似たような話題の人気製品」に取って変わられてしまう、とのことです。
例えば東京の超有名ラーメン店のラーメンが、地方のそれなりに人が集まる場所で「冷凍ラーメン」として自動販売機で売り出されて話題になったとしても、「話題性」で買ったお客様の大半はすぐに次の話題になる商品(※自動販売機で売る商品に限らない)に目移りしてしまうでしょう。結局は一過性の商品となってしまうのです。
また、地域によってはすぐ近くに「似た商品の自動販売機」が出来てしまうと、物珍しさといった「自動販売機で販売するメリットの要素のひとつ」も薄れてしまうでしょう。(実際、飲料やアイス以外の自動販売機に関しては、「こんなもの売っているんだ!」という「売り方の珍しさ・話題性」も販売上のひとつの武器でした。)
「昭和レトロ」ブームで最近話題の、うどんやトーストの自動販売機。懐かしく思う方も多いでしょう。(大半が製造から50年前後と年季の入った機械だそうで。故障も多いと思うので、メンテナンスをされている方々には頭が下がります。)
では、自動販売機のビジネスでは何が一番大切なのか?といった事を前述の営業の方にお聞きしたところ、「ストーリーが一番大事です。」との回答をもらいました。
これは「自動販売機で売っていること自体のストーリー」と、「商品自体に込められたストーリー」の2つだそうです。
まず「自動販売機で売っている」というストーリーですが、主に2つの要素があります。
ひとつは顧客利便性の要素です。「そこにいけば(24時間)いつでも買える。」「(品切れしていなければ)確実に買える」といったことが挙げられるでしょう。その地域ではなかなか手に入らない遠方の地域の商品であれば、「ここで買える事ができる」というのも理由になるでしょう。 もうひとつは販売チャネルとしての優位性の要素です。自動販売機は「看板と店舗の機能が一体化している機械」でありそれ自体が広告塔になっています。ひとつの機械に「広告機能」「商品提供機能」「決済機能」が詰まっているのです。
例えば「コカ・コーラ」の自動販売機を考えてみましょう。
皆さんもご存じの通り、コカ・コーラは世界で最もブランド認知度の高い商品のひとつです。またこのコカ・コーラは、アメリカ内での商品流通の中で、実はかなり早い段階から自動販売機を導入した会社でもあったのです。
自動車大国のアメリカで、広い大地を車で走らせていく中で給油の為に立ち寄るガソリンスタンドには赤い色の一目でわかるコカ・コーラの自動販売機があり、それを飲んでドライバーも一服する、というのがひとつのライフスタイルだったそうです。
(驚く事に既に1940年代からこれが実現されていたそうです。アメリカ凄い…)
この「顧客利便性」と「販売チャネルとしての優位性」の2つの要素をどう活かせるか、これらの要素をベースとしてどのような広報プロモーション戦略/販売戦略を事前に描いて(計画して)いくか、そこが「売れる自動販売機」への最初の一歩でしょうか。
(大げさに思えるかもしれませんが、自動販売機もある意味、ひとつお店を増やす事に似ています。お店を出すときに、事前の戦略も無く進める事は危険ですよね。)
次に、「商品自体に込められたストーリー」に関するものです。さきほど、「人気の商品を用意しても、それだけで必ず売れる訳ではない」と説明をしました。
たとえ人気商品でも、「なぜこの自動販売機で売っているのか?」といった意味がうまく伝わらないと、継続して売上を確保していくのは難しいでしょう。
「その商品を買う」のではなくて、「ここで、この商品を買う」ことに意味を持たせる事が必要となるのです。何故、この自動販売機のオーナーは機械の中にこの商品を入れたのか、お客様のどんなニーズ・需要を考えていたのか、そのストーリーが描ける事が必要かと思います。
これら3つのストーリーが「上手に入っているな!」と私が思った事例を3つほど紹介いたします。
①愛媛県松山市道後温泉商店街にある、お土産用お菓子の自動販売機
こちらは、愛媛県松山市にある有名な観光地「道後温泉」のメインストリートである、道後温泉商店街にある有名洋菓子店の自動販売機です。
こちらの一番人気である洋菓子商品は、お茶請けから時に贈答用にも使える地域に根付いた有名菓子から、近年では愛媛土産としても人気の商品となっています。
道後温泉を訪れる観光客の目的の大半は温泉への入湯です。日本を代表する湯治場として当時のたたずまいも残している道後温泉本館は、営業時間が6:00~23:00と一日中開いており、また松山市内から路面電車で気軽に行けるアクセスの良さも相まって、朝風呂や遅めの入浴などをわざわざ狙う観光客もいます。これらの観光客は商店街を経由して温泉に向かいます。ところがその時間は店が閉まっているのです。
そこで、店の前に自動販売機を用意する事で販売のチャンスをうかがおう、というのが狙いです。(写真をよく見ると、棚の下段は箱詰め商品であるのがわかります。)
いつでも買えるという顧客利便性、行きも帰りも基本的には同じ道を通るので、入浴後の帰りに買ってもらおう、という「ここで、この商品を買う意味」を用意していること、きちんと戦略の練られた自動販売機ビジネスであると思います。
店舗敷地に埋まる形であるので、商品補充も簡単に対応出来ます。
②栃木県宇都宮市にある、くだものの自動販売機
こちらは宇都宮市にある、季節の様々なくだものを取り扱っている自動販売機です。
季節によって夏はメロンやすいかが売られ、冬になるとみかんやポンカンなどが売られるという、時期により販売するくだものが変化していくのが特徴です。
実はこちらの自動販売機がある場所は、元は果物店でした。果物を中心とした青果の卸と小売を行う会社がこの地に小売店を構えておりましたが20年ほど前に閉店。跡地はコインランドリーとなりました。(卸に関しては現在でも継続しているそうです。)
2年ほど前からこのコインランドリーの一角に登場した果物の自動販売機は、卸会社としての商品の目利きの信頼性と鮮度管理の確かさ(冷蔵タイプの機種を使用)に支えられ、あっという間に売れてしまう商品もあるなど大変人気の自動販売機です。
商品の置き方も、家庭用のお買い得なものからお使い物に出来るくらい見栄えがいいものまでバランスよく置いており、また等級の差はあれ、(どれも果物の専門家が選んでいるため)品質への信頼性は高く、これらの2つの理由が「売れる自動販売機」に繋がっているのでは、と考えています。
(昔から済む地元住民は、ここに果物店があった事をよく覚えています。)
卸会社の確かな目利きで選んだくだものが並ぶ自動販売機。ところどころに書かれた手書きのPOPはまさに専門家だからこそ書ける内容で、これらの情報も商品の信頼性に繋がっていると考えられる。なお目の前はコインランドリーと共用の広い駐車場で、主婦などもコインランドリー利用の際に気軽に立ち寄れる環境である。
③栃木県佐野市にある、チャーハンの素などを売る自動販売機
こちらは実はコロナよりも随分前からある、あるラーメン屋の敷地内に設置してある、餃子(を中心とした商品)の自動販売機です。
実はこちら、最初は「冷凍餃子の自動販売機」としてスタートしたのですが、元々ラーメン屋が本業のため、冷凍餃子以外にも何か売れるものはないかと考え、店で出している特製もつ煮と、ラーメンを作っていく中で発生するチャーシューとなるとの端切れ品を詰めた「チャーハンの具」という商品を販売し始めました。
(冷凍餃子は道の駅その他の数カ所に卸販売も行っていた関係で、自動販売機全部に餃子を詰め込む事は当初は大変であった、という事も理由のひとつです。)
ところが販売を開始すると、予想外のことが起きました。実は一番売れていったのが、スペースを埋めていくために入れた「チャーハンの具」だったのです。しかも当初全く考えていなかった顧客である近所の主婦の方々が、口コミで聞きつけて買いに来るという現象が起きました。チャーハンの具は、今でも売上一番人気だそうです。
(あとはごはんと卵をそろえればチャーシューがゴロゴロ入った本格的なチャーハンが出来る「手抜きメニュー」として、主婦の方々には大好評だそうです。)
「今日は手抜きメニューにしよう!」と思ったらいつでも買いに行ける「顧客利便性」、あとはごはんと卵だけ用意すれば、家庭でも本格的なチャーハンが美味しく作れてしまう「商品自体に込められたアイデアストーリー」といった要素が、ここを「売れる自動販売機」としてくれているのでしょう。 なお、「北関東初の餃子の自動販売機」と銘打って既に10年近く前から販売を開始したオーナーの先見の明は、これはこれで素晴らしい戦略だと思います。
北関東初の餃子の自動販売機は、主婦の味方の「チャーハンの具」も売っていた。 私も買いましたが、お肉ゴロゴロのチャーハンになるくらいボリューミーでした。
3.お客様に対して「何」を売るのか?
このような3つの例を見ていくと、ひとつの共通点が見えてきます。
それは、どの自動販売機の例も、「商品を売る」だけにとどまっていない事です。
別の言葉で言い変えると、「商品を手に取るお客様の感情や行動を想像して売る」といった事でしょうか。
3つの例には、商品の背後に
「店が開いてない時にもたくさんお客様は通っているから、その人達に届くように」
「こちらが自信を持って勧める本当に美味しいくだものを、欲しい人達に届けたい」
「時短でも本格的な味にできる商品を作り、毎日の調理が大変な人達に届けたい」
といった作り手の想いと、それをきちんとストーリーとして伝えていく道筋が描かれていました。自動販売機を置く場所の環境や周辺事情を調査し、どのようなニーズ及び課題が眠っているのかを把握。それらのニーズを満たしたり課題を解決するために、お客様に対して「何」を売るのか、という事をきちんと考え答えを出していった、そんな事例であると思います。
自動販売機を使ったビジネスは、一見「いい商品を用意して、人の多い場所に置けば何とかなる」と思われがちですが、実はそれだけではうまくいきません。
やはり、そこには戦略が必要であり、「そこにどんなニーズや課題があり、そのニーズや課題の解決を求める人たちに適した商品を提供する」といった事が重要です。
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