資金繰り表の大切さ (半田コーディネーター)

皆さん、こんにちは。コーディネーターの半田です。

コロナ感染症は5類になり日常生活はコロナ前の生活行動に戻りましたが、コロナ感染症の影響によるゼロゼロ融資の返済が、本年7月より本格的に開始されており、多くの中小企業は物価高やエネルギーコストや賃金上昇の中で収益改善が進まず、積み上がった債務の返済負担への対応に苦慮してます。

 こういった中で有利子負債を多く抱えている企業からの相談も徐々に増えてきています。企業窮状状況を把握する目的で企業代表者とのヒアリングと共に過去の決算書や最新試算表を拝見しながら、これまで多くの支援先で「資金繰り表は作成されてますか?」と問い合わせても、ほとんどの中小企業、個人事業主の方は資金繰り表を作成されていません。

実際の中小零細企業において、資金繰り表をきっちりと作成されているところはほぼない状態なのです。

 

 企業代表者や経理担当者に尋ねても、資金繰り表をしっかりと作成している会社や個人事業主の方にお会いするのはめったにないのが現状です。

どうも社長の肌感覚で経営ができているので、労力をかけてわざわざ資金繰り表を作成する必要が無いと考えているようです。

しかし、資金繰りに困っている会社ほど、資金繰り表が作成されていないことも事実です。

 資金繰りが厳しい企業の大半は、売上原価の高さや販管費の過大支出により営業利益マイナスになり借入金の返済原資を十分に稼げていない場合ですが、会計上は利益が出ているのにお金が支払えず倒産してしまう黒字倒産があることも事実です。

いわゆる黒字倒産とは、資金繰りが回らなくなって・・・。売上げが拡大しているときなどは特に要注意です。

お金の支払いが先行してしまい、売り上げ金の回収が後になるため資金繰りが苦しくなるパターンが多く見受けられます。

 その他にも色々なパターンがありますが、会計上黒字でも会社の倒産や事業の廃業があるのは、お金が無くなるからです。

この黒字倒産を防ぐ、前もって資金手当てを行う上でも資金繰り表の作成は重要となり、多くの中小企業が作成していないからと言って自社も作成しなくて良いというものではありません。

実際に黒字倒産や、増収局面での倒産は想像以上に多いのが実情です((株)東京商工リサーチ公表の2019年データ*によると、倒産企業の47.2%が黒字企業。また倒産企業の42.8%が前期比増収企業となってます。)

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200416_01.html

1.資金繰り表が必要な理由

なぜ資金繰り表が必要なのか?

それは、会社を倒産させない、事業を廃業させないためです。

会社が倒産や事業が廃業するのは、赤字になったからではありません。大きな赤字でも現預金があれば潰れることはありません。倒産や廃業になってしまうのは、企業に現金がなくなるからです。

 また金融機関から借入を行う際にもこの「資金繰り」表を根拠として、あらかじめ借入必要額を算定することが必要となります。金融機関は融資審査において、財務内容と同様、実はこの「資金繰り」を非常に重視しているのです。また、借入申込の際に「資金繰り表」を準備すると、しっかり管理できている事業者として金融機関からの評価も上がりますし、融資交渉も交渉もよりスムーズになります。

2.資金繰り表作成の効果

 資金繰りをしっかりしている企業が急に倒れることがあるでしょうか? 資金繰り表を作成する最大の効果は、早期に状況を把握することで、早めの対策を講じることができることです。近い将来厳しい状況に陥ることがわかれば、何らかの手を打つ必要があります。収入を増やす方法としては具体的に、売上を増やす、売上債権を早期回収する、資金調達を行う、利用可能な助成金、補助金の活用を行う、必要性が低い資産を売却する、などです。逆に、支出を減らすには支払額そのものを減らす、支払い時期を繰り延べてもらう、などの方法が考えられます。いずれにしても、資金ショートまでの時期が切迫してしまうと選択肢が減ることになりますので、資金繰り表を作成する意義は非常に高いのです。

3.資金繰り表の作り方

 資金繰り表とは、「お金の出入りを把握する一覧表」のことで、どのようにお金が入金され、何に使われているのかが一目でわかるようになります。

 また、過去のお金の出入りを記録するだけでなく、将来のお金の出入りを「いつ、どれだけのお金が必要なのか」を一目でわかるようにするものでもあります。

 一口に資金繰り表と言っても、過去の出入りを記載したものと、将来の出入りを予測して記載したものに分かれます。

 この過去と将来のお金の出入りを一目でわかるようにしたものが資金繰り表です。 ポイントは、まず簡略版をつくってみる、ということです。Excelシートでの作成をおすすめしますが、不得意な方はインターネットで検索するとたくさんのひな形がありますので、ダウンロードした上で、自身が入力しやすいようにアレンジしていくというのもお勧めです。

(参考)日本政策金融公庫のホームページのひな形 (下図)

 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/data1_170501.xls 

 年末年始の少しの余暇を活用して資金繰り表を作成してみて如何でしょうか?作成について、分からない方は是非よろず支援拠点にお尋ねください。