今年、栃木県よろず支援拠点に入った飯塚 朗と申します。長年、地域金融機関に勤めておりました。新たなフィールドで頑張りますので宜しくお願いいたします。

1.出会い
1年半ほど前に、とある外国人と知り合い、交流が生まれました。国籍はベトナムですが、日本には長く永住権も持っています。両国を繋ぐビジネスがしたいと考え、また両国の文化的な交流や地域コミュニティとの交流にも力を注ぐなど、高い志を持っており魅力的な方です。
当方はと言えば、これまで外国人の知り合いもなく、外国語も苦手で、仕事面での接点もあまりない。せいぜい何度かの海外旅行をした程度であり、国際化からは遠い存在でした。
しかし、だいぶ以前から国際化の必要性が叫ばれ、その必要性を感じることはありましたので彼との接点は嬉しく、交流を深めることをとてもエクサイティングでインタレスティングだと感じています。
「世の中は偶然でできている」といった人がいます。一方、「世の中は必然でできている」といった人もいます。ともに含蓄のある言葉ですが、それはこの際いずれでも良く、とにかく展示商談会という千数百人が集まる場で自分達は出会ったのでした。
彼とは、色々な話をしました。「食べ物の話」「風土の話」「習慣」「服装」「挨拶」「名前の付け方」「葬式の仕方(彼の身内にご不幸がありましたので)」。当方は目新しいことが多く、彼は日本に長くても深いことは分からないこともあり、ギブアンドテイクの交流はうまくいっているように思います。
2.ことば
自分の学生時代は、外国語も第二外国語も熱心に取り組まなかったせいで全く自信はないのですが、実践で使うとなると俄然興味が湧いてきて、自己流ながら自ら進んで勉強するようになるのは自分だけでしょうか。彼は日本語も堪能なので、彼との付き合いにおいてこちらが勉強する必要はないのですが、少しでも近づくためにと思い、挨拶にはできるだけベトナム語を使うようになりました。メールやラインのやり取りでも、それを使うように心掛けています。Cheo、Cảm ơn、Xin lỗi、khoe khong? 彼には、かえって鬱陶しいかも知れません。今度、聞いてみようと思います。
.jpg)
3.人柄や気質
人との付き合いが始まる際に、一番初めに気になるのは、どんな人だろうかということ。これは誰しも同じだと思います。ましてやそれが今まで付き合ったことのない外国人であったら尚更です。一般的には、ベトナム人は真面目で謙虚で日本人には馴染みやすいとのことですが、もう少し深く、決めごとについてどんな風に捉えるのか?とか、約束時間についてどのように考えるのか?とか、家庭の優先順位とかが気になりました。実際のところは付き合い始めないと分からないのですが、インターネットで調べたりもしました。
それによると、ベトナムの人は「約束事は何が何でもという感覚ではなく、守ろうとするが達せられないときは仕方ない」とか「日本人よりも家族優先の考え方で仕事よりも優先させる」とか「特にダナンなどの中部では一旗揚げようという考えが強い」とかが出てきました。これは決して悪いことはない。むしろ自分達の方がやや不思議に見られる気もします。最初は、これらのことは参考にしながらでしたが、当り前のことなので全く気になりません。約束時間を違えることやそれによってスケジュールを変更することは何度かあり、ちょっと嫌になったこともありましたが、大抵事前に連絡してくるので安心な面もありました。
4.ベトナムフェスティバル
栃木でも様々な地方公共団体や協会が、国際交流に力を入れています。昨年は、家内とともにオリオンスクエアで行われた「栃木ベトナムフェスティバル2024」行ってみました。彼と知り合う前であれば、決してなかったであろうことです。日本側からは、栃木県(知事)をはじめ各市町や各国際交流団体、ベトナム側からは、在日ベトナム大使館(駐日臨時代理大使)、栃木県ベトナム人会が出席して華やかに行われました。ベトナムの民族衣装アオザイを着た美しい女性陣のダンスや子供達による出し物があり、ベトナムの飲食店ブースも多く出店していました。
これらを見学したり、飲食したりしながら、自分がボンヤリと空想していたのは、日本とベトナムのコラボレーションでした。ベトナムの民族衣装であるアオザイと日本の織物や染物との協調企画。それから、食べてみて大いに気に入ったバインミーというベトナムのサンドイッチ。これは、かつてフランスがベトナムを支配した時代の影響だそうですが、フランスパンを使っており、それに挟んだ具材も多様で美味しかった。自分は見たことがないのですが、バインミーのスタンドなどあれば、売れるのではないだろうか?投資額も大きくないので、ベトナムの方が創業にチャレンジし、栃木県よろず支援拠点がそれを支援するのは、とても良い図だな、などと思っていたのでした。「Cho tôi cái này.Dung cho ngo ri .」(これをひとつ下さい。パクチー抜きでお願いします)なんて使ってみたいですね。
.jpg)
5.伝統工芸
彼とある飲食店に立ち寄った時のことです。お店の入口付近に結城紬の展示品があり、彼はそれに見入っていました。何か気になりますか?と聞いたところ、これはどういうものですか?と聞かれました。すぐにアオザイとのコラボレーションを考えているのであろうと思いました。 皆さんご存じのように、本場結城紬はユネスコの無形文化遺産に登録された伝統的な絹織物で、数ある織物の中でも最高級素材です。知り合いに聞いたことがあるのですが、ものによると千万円単位とか。自分はその時、とてもアオザイとコラボできる素材ではあるまいと直感し、むしろ綿織物の伝統工芸である真岡木綿があることを紹介しました。彼はこれにも大変興味を示したことから、後日、真岡のことについて詳しい知人を紹介し、真岡木綿会館を一緒に見学してきました(自分も行ったことはなかったのです)。勉強して分かったのですが、真岡木綿はかつて繁栄していましたが、昭和初期に導入された機械化に押されて衰退したものを、現在は自ら種蒔きして綿花を育てる(一般的なアメリカの綿花とは種類が違うそうです)ところから復活させてきたもので、それには大変なご苦労があったことなどを二人で勉強してきました。伝統工芸品には、自分のような素人には見えていない背景やご苦労があるものだと学び、改めて敬意を抱くとともに、当然ながらそれは日本ばかりではなく、ベトナムにだってそれはあるのだと気付き、それらをコラボレーションできれば、大変価値のあることだと思いました。結城紬でも真岡木綿でも協力しあえれば良いことだなあ、と考えています。
6.ビジネスへのアプローチ
そうした彼からビジネス交流について聞かれました。 日本の商品を海外に販売していく販路開拓支援の取り組みが、国、地方公共団体、金融機関などによって盛んに行われています。大小様々な国内企業を海外に知っていただき、それが販売に繋がることは素晴らしいことです。一方、反対の流れだってあって良いはずです。これは聞いた話ですが、山形の花笠音頭の花笠の作り手が少なくなってしまったのを、ベトナムからの供給に助けられたとのことです。詳しいことは知りませんが、同様の流れだってあって良いはずです。 大企業ばかりでない、中小企業や小規模企業によるこうした取り組みもビジネスに繋がるのではないかと大いに空想を拡げているところです。