今、なぜ廃業なのか!(中小企業の新陳代謝を活発に) (矢口コーディネーター)

1.現状を知る

 戦後、一貫して高度成長の時代が続き、バブル経済期をピークにその後は衰退の途にある。さらにコロナ禍などにより景気の陰りが見えてきた。右肩上がり時代は供給を上回る需要が続き、生産、消費とも拡大傾向にあり経済成長は続いてきた。しかし、オイルショックや少子高齢化による人口減などの影響などから需要の伸びは止まり、同時に経済の成長も止まるどころかマイナス成長の兆しが見える。

 供給側の代表である生産に携る企業や、それを消費する手段を促進する小売業などは既存事業の拡大や新規事業の進出などで当然のように成長してきた。そのため産業や事業の新陳代謝は需給のバランスに伴って今日を迎えたが、新たな供給手段やIT化によってその形態の変化は激しい。

 一方、成長の陰りが見えてきた2000年前後頃から、国をはじめ市・町などがこぞって創業支援に乗り出し景気衰退や産業低迷をカバーする動きができてきた。

 また、新たに創業した企業は試行錯誤をしながら、この厳しい時代に挑戦している。 また、高度成長時代から安定してきた企業や新たなに創業した企業なども内外環境の変化によって、その安定も危ぶまれてきている。右肩上がりの経済の成長率の高い時代と違って、現在は安定もしくは低迷傾向にあることから何らかのインパクトがあるとそれが引き金になって経営の低迷に陥る可能性がある。

                    (日本のGDP成長率の推移)

 今回のコロナ禍による中小企業向けの支援では、政府系金融機関が貸し出した金額は約20兆6000億円であり、現時点で約8%にあたる1兆6000億円の返済が困難な状態にあると会計検査院は発表している。

 しかもこの回収不能の恐れがある債権は日増しに増加している。同様に民間金融機関によるコロナ禍に関しての融資も信用保証協会付で約38兆3000億円(23年度末時点)、このうち返済困難になって代位弁済した額は約4900億円でこれも増加傾向にある。

 また、企業倒産件数は1万件を超える勢いにあり、過剰債務を抱えた企業淘汰に対する対応策は重要な施策の一つとなる。

 下表は中小企業白書(2024年)から開廃業率を見たものであるが、開業率は4%前後で廃業率はそれを下回り3%台となっている。アメリカやヨーロッパと比べても10%台の開きがあり、欧米においては開業、廃業(10%以上)とも活発に行われているが、残念ながら我が国は欧米と比べると開廃業は低迷し経済活動の基本である新陳代謝が弱いことを意味している。

 今回のコロナ禍が引き金となって企業の淘汰が進んでいるが、これはマグマがたまり何かのきっかけで爆発するような現象に似ている。その意味でいうと窮境状態に陥っている企業がこのような誘因を受けると倒産に追い込まれといった状況になるのと同じである。

 したがって、現在の国の内外を問わず、今回のコロナ禍はこの誘因になったといっても過言ではなく、むしろこれから本格化していく懸念があるだろう。  下図は日本公庫が実施したアンケートの結果(2024年)であるが、廃業の理由として経営者自身の自己都合によるものが多く、業績不振の理由は意外と少ないことがわかる。特に体力の衰えや健康上の理由、高齢化などで全体の半数以上を占める。

 一方、中小企業庁の調査(2016年)によると、廃業の理由の第一は「業績不振」であり、第二が「後継者難」となっている。調査の仕方によって回答が変わっているが、実際に経営相談を行っている立場からの感想だと、業績不振による理由が最も大きいと感じる。

 後継者難の理由も上位に位置しており、黒字でありながら廃業(黒字廃業56.5% 2021年東京商工リサーチ調)したという企業が5割を超えている点も注目すべき点であろう。

2.新陳代謝がなぜ必要か

 今までは経営難に陥った企業や厳しい経営状態にある企業を救済する施策が講じられてきた。しかし、国全体などの経済の動きを大局的にみるならば、むしろ必要としない企業や役割の終わった企業の退出は当然であると考えるべきである。

 今後、黒字転換が難しいと判断される企業は積極的に退出できるような支援が必要となる。そうしなければ赤字の垂れ流しや負債などの増大による損失は一企業だけの問題ではなく、国全体の損失となることを自覚しなければならない。

 政府の施策を見てもオイルショック時や今回のコロナ禍の影響時には率先して窮地に追い込まれた中小企業の救済策に手厚い救済策を講じている。この施策は必ずしも間違っているとは言えないが、結果的にみると退出すべき企業までが延命され、そこに多大の負債等が増大している現実面も無視できない。

 今振り返って見ると、一連のこれらの救済策を受けながら結果的には破産に追い込まれたという例も少なくなく、国民の税金などが無駄になった事例も多い。

 現在、廃業相談に乗っていると、相談のタイミングがあまりに遅く、結果的には法的処理に頼らざるを得ない案件がいかに多いかである。我々が廃業を支援する意味は、法的処理ではなく自主的な廃業を目指すようなドバイスなのであるが、相談が遅いがため破産に追い込まれたという案件が増大している。

 早めの相談、早めの判断で企業及び国全体の損失を軽減し、あわせて新たな企業の参入を促すことが廃業支援の意義であり、そこに新陳代謝の活発化、経済の活性化につなげることが重要と考えている。

 企業の今後の行く末を判断するのは難しいが、専門家の立場からアドバイスを行い、それを参考に最終判断は自ら行う。即ち、自らの判断の予備知識として活用することが必要なのではないだろうか。

 各県に一か所設けられたよろず支援拠点は、多くの相談実績と専門知識を有することから企業の今後の方向性や将来性を見極めた有意義なアドバイを行なえる唯一の相談所である。

 ただし、廃業へのヒントや意思決定のための側面的なアドバイスはできるが、最終的な判断は社長であることは十分に認識する必要がある。

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